続けて叩く

(昨日のあらすじ)
叩きながら考えました。こうして叩くことでこのナットは加工硬化しているんだろうなあ、と。

(以下続き)

もっとも、ペンキ剥離のための打撃程度で加工硬化するかどうかは疑問です。加工硬化は塑性変形の結果なので、ナット表面が降伏したわけですから凹みが生じていないといけません。つまり凹むほどの打撃を加えないと硬化しないのです。ただ、丸頭金槌の平らな方ではなく丸くなっている頭の方で叩くと力は1点に集中しますからヘタすると(うまくすれば?)凹みますけどね。

実はこの丸頭を英語でpeenと言って、ピーニングの語源になっています。
「Babylon( - online dictionary and full text translation softwareで調べると

(以下  http://www.babylon.com/definition/peen/Japanese  から引用)
peen
叩く; 広げる
(名) 金槌の頭

(引用終り)

とありました。

「Wikipedia, the free encyclopedia」を見ると

(以下  http://en.wikipedia.org/wiki/Peen  から引用)
The word peen may refer to:

part of the head of a hammer, as for example in a ball-peen hammer
Peening accordingly means the working of metal by hitting with a hammer

(引用終り)

であり、ついでにそこからPeeningへ飛べば

(以下  http://en.wikipedia.org/wiki/Peening  から引用)
Peening is the of working a metal's surface to improve its material properties, usually by mechanical means such as hammer blows or by blasting with shot (shot peening). Peening is normally a cold work process (laser peening being a notable exception). Is to expand the surface of the cold metal, thereby inducing compressive stresses or relieving tensile stresses already present. Peening can also encourage strain hardening of the surface metal.
(引用終り)

だそうで、もはや訳すのも面倒です(雰囲気だけで解ったふりをしています)。

要するにピーニングは金属表面を強化する冷間加工(一般には)方法ということで、工業的には「ショットピーニング」という表面強化加工方法が有名ですね。

身近な例でいえば缶ビール(いや、ジュースでもいいんですけどね)のプルタブを何度か曲げ伸ばしすると折ることができる、あの現象と同じことが打撃によって生じるのです。

鋼材のCO2溶接後に表面のスラグやスパッタを取るためジェットたがね(こんなやつ→ http://www.marukoo.com/sub/sub150.html )のジャブをお見舞いすると超音波探傷時に探傷感度に影響する(こともある)、また浸透探傷では割れの開口部を押しつぶしてしまう可能性もあるあのデコボコの表面では「転位が動く」というミクロな現象が起きていて、その結果マクロ的には硬く高強度になり、かつ圧縮応力が生じて割れになどの進展を阻む…ということが知られています。

この転位の動きはなかなかイメージしにくいのです。金属工学本を開くと、ドミノ倒しのように傾いて倒れることでその傾斜分長さが変わるとか、トランプの束を滑らせて広げるとか、あるいはカーペットの一端にうねをつけてそのうねを反対端に押し送ると全体が移動するとか、いろいろと工夫しながら説明されています。
僕自身は下り階段を勝手に降りてゆくスプリング玩具(こんなやつ→ http://retro-club.com/spring.html )を思い浮かべます。
横にした円柱形のスプリングに上から手のひらで押しつけると各リングがずれて斜めにつぶれる…とおもいきや、実はつぶれたのではなく斜めになって延びただけ。でもさらに力をかけ続ければリングがどこかからか切れるか、ひしゃげるか。

高強度で硬く脆いこととたわみやすいが延性に富み割れに強いことは連続する現象でありながら、あるターニングポイントを境にジキルとハイドのように、あるいは男と女のように(?)対極に位置することになるものなのです。

ナットを叩きながらこんなことを、考えていたのではなく夢に見ていたのかも知れません(眠ってたのか!)。

…実は夢には続きがあります。まだまだ叩き続けます。




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