ボルト余長3山、すみ肉脚長 t/3

日々疑問に思いながら忙しさにかまけて(ということにして)なおざりにしている事って、たくさんあります。ムスメには疑問点はすぐに調べろと言いながら、自分の領域は放置プレイ…。

たとえば、ボルト締結の際にねじ山をナット上面から3山以上出すというその理由・根拠は?

僕の職場近傍工業地帯の各工場基準にも3山とか2山とか出すように規定されていますし、国土交通省の公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成25年版(→ http://www.mlit.go.jp/common/001002016.pdf )でも、7章 鉄骨工事 / 2節 材料 / 7.2.3 普通ボルト の項に「締付け終了後ナットの外に3山以上ねじが出るよう選定する」とあります。
インターネットの質問サイトを眺めるとさまざまな理由が不安気に語られています。どれも神話のごとく古くからの言い伝えレベルで、およそ工学的技術的な理屈は見当たりません。とりあえずはナット上面より出すのがいいらしいのですが、その理論的根拠は…。

唯一、実験データを示しているサイトがあって(→ ボルトエンジニア株式会社 http://www.bolt-engineer.net/lab/05.html )その力学的見地からの理由づけは納得できるので、人に尋ねられたらこれをネタに回答しようと思っています。

もう1つ、すみ肉溶接の脚長はどれくらいがいいのか、という疑問。



JISB8501「鋼製石油貯槽の構造(全溶接製)」ではS≧(1/3)t(最小値は4.5mm)、つまり「サイズ=脚長」の場合(これがどういうことかっていう基本事項は省きます)は
t=22mm(貯槽としては厚すぎるけど建築鉄骨に合せてみた)ならば
S(=脚長)≧(1/3)t=(1/3)×22≒7.3
小数点以下を切り上げ、S= 8mm。

溶接継手の強度計算には脚長ではなく「のど厚」を使うので、「のど厚(a)」で整理すると…

a =S*(1/√2)
=(1/3)t*(1/√2)
=(1/3√2)t
={(√2)/6}*t
={(√2)/6}*22
≒5.2
なので a≧6mm。

同様に、「道路橋示方書」では t1(薄い方の板厚)≧S≧√(2×t2 (厚い方) ) (ただしS≧6mm)。
板厚22mm同士の溶接ならば
 S≧√(2t)
=√44
=6.6≒7mm。 (S≧6mmを満たす)
となり、のど厚は
a =S*(1/√2)
=6.6×0.707
≒4.7
で、小数点以下は切り上げ結局 a≧5mm でOKとなります。

それぞれ22mmの厚さに対しけっこう小さいのですが、そもそもすみ肉溶接は溶着金属の量が少ないために急熱急冷になりやすく、それによる低温割れを防ぐために余盛を最小限に抑えているものと思われます。とはいうもののあまりに小さい場合はせん断応力に耐えられないため最小値の制限があるのでしょう。貯槽のS≧(1/3)t なんてそれこそ引張りとせん断に対抗する応力あたりから来てるんでしょうね。強度計算に母材と45度斜めの「のど厚」を使うのも同様。

さて、かたや僕の知っている某工場基準に S≧1.4t ってのがあります。1.4という数字は√2=1.414…から出たものと想像できます。その逆数0.707…もよく耳にする数字で「脚長は薄板の70~80%」なんてのがありますね。
それはさておき、S≧1.4t ということは板厚 t=22mmだとS=33mm。ちなみにのど厚が板厚と同じ22mmになるということです。
うーん、応力的には強いですが、これだけの大きな余盛となると溶接変形及び残留応力の増加による影響が捨てて置けないことになりそうです。

以上のように、どれくらいの脚長が良いのか人に尋ねられても、基本的には破壊応力に対抗する強さと熱影響とのバランスの取り方で寸法は規格基準ごとに異なっているとしか言いようがありません。

こんな具合で、ホントのところはよくわからないことがまだまだたくさんあって、まだまだ目指す資格試験に挑戦するのは時期尚早なのかもしれません…。




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この記事へのコメント

天使
2013年12月15日 16:33
全く知りませんでした。ボルトのねじ部は均等荷重だと思っていましたが、ナットにかかる第一ねじ山が最大応力を受け持つのですね、遊戯施設の車軸部のMTはこの子に焦点を絞って探傷すべきだと反省しました。このブログはかなり技術レベルが高いですね。
niwatadumi
2013年12月16日 20:16
さすが師匠、転んでもただでは起きない…ってチョット違うか…。着眼点が卓越していらっしゃる。やはり僕よりはるかに検査屋ですね。
ばふ
2015年10月04日 00:21
自分は、31年前に3山出すよう言われたのが初でした。

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